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水と金属電極界面での反応を大規模計算で解明

木﨑栄年  きざき ひでとし
大阪大学大学院工学研究科

木崎さん写真
量子力学に基づく第一原理シミュレーションは、近年その手法の飛躍的な進歩によって、基礎物質科学の分野におけるさまざまな現象の解明に大きな役割を果たしてきた。最近では、電気化学反応過程に対する第一原理シミュレーション手法も急速に進歩している。従来の電気化学反応の実験研究では反応素過程を直接目で見ることができなかったため、反応物と生成物について反応速度論的な考察を行うことで反応機構が議論されてきた。しかし、第一原理シミュレーションの急速な進歩により、反応の素過程を原子レベルではじめて直接調べることが可能になり、電極界面での反応の素過程の追跡、それらの電極電位依存性や電極金属依存性についても調べられるようになった。
例えば、水と金属電極との界面での反応は燃料電池の研究分野で非常に重要であり、複雑な水の構造と電極界面の影響を取り入れた反応シミュレーションが行われてきた。これにより、ヒドロニウムイオンH₃O+ から白金電極に電荷が移動して水素原子として白金上に吸着する過程(水素発生反応の第1段階であるVolmer 過程)が再現され、H₃O+ と金属表面間の相互作用や、水の挙動、電位がそれに与える影響を解明し、水素発生反応メカニズムを解明する重要な手がかりを与えている。
しかしながら、従来の電極界面のシミュレーションでは、計算資源の制限から周期境界条件によるスーパーセル依存性が残っている。また、無数に存在する準安定な水の配置を統計的に十分サンプリングし、多数の反応経路について電極電位や電極金属依存性を調べるためには、膨大な計算が必要となってくる。
そのため、どうしても大規模高速並列計算が必須となる。そこで、われわれは「京」を用いて、より現実的なモデルを構築し、燃料電池電極反応の全容解明をめざしている。