CMD20 「スパコンコース」
小野倫也 おの ともや
大阪大学工学研究科
附属超精密科学研究センター 助教
CMD®ワークショップの「スパコンコース」は2012年3月のCMD®20で4回目になる新しいコースです。
スパコンコースでは、計算機リソースを考えて、受講生数は3~4名に制限し、私たちがふつうに研究を行っているリソースに近い環境でマンツーマンの実習を行うようにしています。参加申し込みをしたのは、大学院生、ポスドク、民間企業まで、これからの計算科学を担う人材です。その中から、ビギナーコースやアドバンストコースへの参加状況、これまでの履修内容などを見て受講生を選びました。講師には小野(大阪大学)と江上喜幸さん(長崎大学)が、ティーチングアシスタントに齊藤正一朗さん(大阪大学)の計3名が当たりました。スパコンコースではRSPACEコードとSTATEコードを交互に使用していますが、今回はRSPACEを使いました。実習で行う計算内容は、あらかじめ受講生に希望を出してもらい、私たち講師と相談して決めていますが、受講生はこのRSPACEを使った学術論文を読みこんでいて、的を外さない計算テーマを出していました。実習用のスパコンはこれまで大阪大学サイバーメディアセンターのSX-9を利用していましたが、今回は東京大学物性研究所のAltix ICEを使いました。実習初日は、まず計算機の紹介から始まり、その後、コードを使った実習に入ります。コードを使うのが初めてという人が多いので、最初はマニュアル兼テキストを読みながら進めていきます。RSPACEは、MPIによるプロセス並列とOpenMPによるスレッド並列の両方で並列化されています。Altix ICEはマルチノードでの利用を前提としているので、あえてMPIによるプロセス並列を意識させるように実習を行いました。RSPACEは、使うコアを増やせば計算時間を短縮できるので、受講生には次世代スパコンのような超並列アルゴリズムの重要性を実感してもらえたのではないかと思います。
ワークショップ後のアンケートによると、ノード、CPU、コアといった計算機の構造と、それに対するプロセス並列、スレッド並列の役割が理解しづらかったようです。今後、ワークショップで超並列計算機を利用した実習を進めていくにあたり、物理・化学の授業に加えて計算機の構造を解説するようなコンテンツも必要だと痛感しました。
2日目以降の会場の雰囲気は、まるで研究室のようでした。他のコースと同様に休憩時間をとっているのですが、計算に没頭してしまい、ジョブの合い間に休憩をとる人や、休憩なしで計算を続ける人もいました。そして、少し使い慣れたころに、ワークショップが終了となりました。ワークショップでやりたかったことができなかった受講生がいたのは残念ですが、終了後のアンケートを見ると、今後の共同研究の希望が生き生きと書かれていたりして、講師としてやりがいを感じる場面もありました。