松尾春彦 まつお はるひこ 東京大学大学院工学系研究科 特任研究員
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International Supercomputing Conference (ISC) ’11が6月19 ~23日にドイツのハンブルクで開催されました。この会議に出席した松尾春彦さんは、世界の計算機科学の最先端がすでに「京」から「エクサ」に移っていることを、肌で感じました。
ISCは、スパコン、ストレージ、ネットワークに関する世界規模の国際会議と展示会です。1986年から毎年1回開催されていて、年2回更新される TOP500 のうち1回はこの会議で発表されます。私は研究者として世界の動向を調べるため、今回の会議に出席しました。 初日は前夜祭的な感じで、チュートリアルや、ワークショップなどが行われ、2 日目以降が本番でした。通常の学会と同様、国際会議 プラス 展示会といった内容でしたが、NVIDIAやSGI などHPC(High-Performance Computing)関連のベンダのトップなどが数多く講演者として参加しており、アカデミックな雰囲気よりも企業色が強く出ているのが特徴的でした。そのためアカデミックに偏っていない、現実的な近い将来のスパコン像を窺い知ることができたのではないかと思います。
初日、私は MPI/OpenMP の ハイブリッドプログラミングのチュートリアルに参加しました。ハイブリッドプログラミングの実践的な知識が得られるハイレベルな内容でした。 2日目。 TOP500ランキングの発表があり、いきなり「京」の1 位受賞を耳にして驚かされました。日本ではフロップス(1秒間に何回浮動小数点数演算ができるかという性能指標)値ばかりが注目されがちですが、それよりも消費電力の低さや連続稼働時間の長さなどのほうがインパクトを与え、高く評価されたようです。
3日目はNVIDIAのデイビッド・カーク(David Kirk)博士と、並列アーキテクチャの大御所であるトーマス・スターリング(Thomas Sterling)博士によるエクサスケールのスパコン環境についての討論を聞くことができました。他にも、紹介しきれないほどいろいろと面白い講演がありました。 ISC'11を通して強く感じたのは、"次世代スパコン"とはすでにエクサスケールのものだということです。つい最近まで「京」を次世代スパコンと呼んでいたので 、スパコンの世代交代の速さにはあらためて驚かされました。また、スパコン関係のベンダのトップやそれに近い人たちの生の声が聞けたことで、近い将来のスパコンの動向調査について確かな手応えが得られました。
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