Nagoya Satellite Workshop(吉井範行)
CMSI Nagoya Satellite Workshop 2013
Large-Scale Molecular Simulation for Understanding Molecular Mechanism
内外の研究者が最新の開発動向を紹介
2013年10月17 ~19日に名古屋で催されたCMSI国際シンポジウムのサテライトワークショップでは、超並列コンピュータを用いた分子動力学(MD)やQM/MM計算によるタンパク質、脂質膜などの生体分子についての最新の研究成果を、国内外の新進気鋭の若手研究者に講演していただきました。また、これらの大規模系の計算を実行するために必要不可欠となるソフトウェアに関しては、国内外で開発にあたっている研究者が、最新の開発動向を解説されました。そのときの様子を紹介します。
ワークショップ会場となった名古屋都市センターは、金山駅に隣接する高層ビルの14階に位置し、伊勢湾を一望できるなかなか良い場所でした。また、中部国際空港(セントレア)から名鉄にて乗り換えなくアクセス可能であり、JR名古屋駅からも近いため、海外からの招待者のみならず、国内から参加された研究者にもそれほど不便をかけずにすんだのではないでしょうか。
今回のサテライトワークショップには、海外から3名を招待しました。QM/MM計算を用いて生体分子の化学反応について精力的に研究を進めているQiang Cui氏(University of Wisconsin, USA)、pHを考慮に入れた独自の粗視化モデルを用いてタンパク質分子の混合状態についての大規模シミュレーションを実施しているMikael Lund氏(Lund University, Sweden)、著名な並列計算用の汎用分子動力学計算ソフトLAMMPSの開発メンバーであるTzu Ray Shan氏(Sandia National Laboratories, USA)です(密度汎関数理論で有名なWeitao Yang氏は東大での国際シンポのみ参加)。また、国内からは、タンパク質を中心とした生体関連分子について非常に精力的に研究を展開されている池口満徳氏(横浜市大)、松林伸幸氏(京大)、高橋英明氏(東北大)、山下雄史氏(東大)、粗視化モデルの開発を進めておられる篠田渉氏(名大)、界面系について幅広く研究されている石山達也氏(東北大)、藤本和士氏(立命館大)に講演していただきました。いずれも超並列マシンによる自由度の広がりを生かし、研究の地平を広げつつある先鋭的な研究ばかりであり、ディスカッションが盛んに行われていました。
MD計算の高速・超並列化の現状
特に本ワークショップの主題の1つであるMD計算の高速・超並列化に関して、理研で開発されているGENESIS についてはJaewoon Jung氏、米国Sandia国立研究所にて開発されたLAMMPSについてはShan氏、そして名大岡崎研究室を中心に開発されたMODYLASについては安藤嘉倫氏が講演されました。超並列対応の最新MD計算ソフトについて、性能等の現状を知るうえで大変良い機会となりました。さらに、専用計算機によるMD計算の高速化に関しては、岡顕治氏から開発の歴史も含めた興味深い講演を伺うことができました。
会期中、夜は両日とも金山駅近くにて、定番ではありますが手羽先をはじめとした名古屋メシを堪能していただき、親睦を深める楽しいひと時を過ごしました。
(吉井範行:名古屋大学大学院工学研究科)