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水素・メタンハイドレートの生成、融解機構と熱力学的安定性


水素ハイドレートとメタンハイドレートとはどんなものですか?
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ハイドレートというのは、高圧環境などで水分子と他の気体分子が合わさって構造をつくったものです。水素ハイドレートは氷の中に水素が入ったものですが、温度や圧力によって籠状のクラスレートハイドレートという構造をとったり、普通の氷のすき間に水素が入るような構造をとったりします。中に入る水素の量も条件によってさまざまです。
メタンハイドレートは最近よくTVなどでも耳にしますが、メタンのクラスレートハイドレートです。水分子の籠にメタンが入っているような構造をしていますが、実際にはメタンがないと水だけでは籠構造はできません。

 

今はどのくらい研究が進んでいるのですか?
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ハイドレートについては、20年くらい研究していて蓄積がありました。比較的計算負荷の低い方法で統計量を計算して、構造の相図(下の図ー準備中)を描くと、かなり実験と計算の結果が合うことがわかってきています。水素ハイドレートに圧力をかけると、水の質量の9分の1くらいまでなら氷に水素を入れてためることができるのですが、それには2万気圧くらい必要で、車に積んで運ぶことはとてもできません。ただ、別の物資を添加することで圧力を下げることができるので、応用も期待されています。
そこで現在は、京コンピュータで分子動力学ソフトウェアModylasを使った大規模なメタンハイドレートの融解のシミュレーションを行っています。

 

メタンハイドレートの融け方を調べているのはなぜですか?
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メタンハイドレートは他の化石燃料の2倍くらいの埋蔵量があるとも言われていて、産業への利用が期待されています。でも、メタンハイドレートは海底にあり、その質量の87%以上は水です。固体として掘り出すのでは採算がとれません。掘る前に溶かして、気体のメタンだけ集めてしまう方法が必要です。熱力学的には入っているメタンの10 ~20%くらいを燃やす熱量で融かすことができるのですが、実際に融かすにはいろいろな条件が必要になります。それらの条件をシミュレーションで調べています。

 

今後の研究計画は?
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水素ハイドレートについては、今あるモデルと理論を改善して計算精度を上げる方法を開発しています。メタンハイドレートについては、より大規模なシミュレーションを行って、メタンの気泡の近くと遠くでハイドレートの融け方にどのような違いがあるのか調べることを計画しています。現在のシミュレーションでは、水の中の気泡が生成して成長するまでの過程を追跡することができません。
ほかにも、外から力を加えてハイドレートを融かすようなことができないか、シミュレーションで確かめる計画も立てています。